〈閲覧注意〉
この記事は直接的な写真や表現はありませんが、動物の駆除に関する内容が含まれます。また亀の写真も出てくるので、爬虫類が苦手な方はお戻りください。記事を最後まで読んでいただければわかると思いますが、この外来種駆除の活動は中途半端に命を取り扱うのではなく、真剣に生き物と自然環境保全に向き合った上での活動です。どうぞご理解ください。
佐鳴湖の自然を保とう。外来種の亀を駆除する活動に参加しました。
暑い日が続いています。皆さん熱中症は大丈夫ですか。我が家はこの日、佐鳴湖の北岸へとやってきました。
車のクーラーも焼け石に水。外に出ればサウナの中にいるような陽射しの中、ここまでやってきたのは佐鳴湖にいる外来種の亀を駆除するため。
一応説明しておくと、外来種とはもともとその地域に居なかったのに、人間によって他の地域に運ばれてきた生物の事を言います。今回は亀の捕獲ですので、亀で言うとミシシッピアカミミガメやクサガメが外来種にあたります。外来種の逆に在来種とは、その地域に昔から住んでいる種を指します。佐鳴湖にはニホンイシガメやニホンスッポンが古くから住んでいます。
今回の外来種駆除は、昆虫を食べるイベントや外来種の捕獲などをする団体『昆虫食倶楽部』の活動の一環。昆虫食倶楽部は佐鳴湖の外来種駆除の活動を始めて8年。メンバーだけでなく広く参加者を募り駆除活動を行っています。
流石の猛暑とあってこの日は参加者が少なめ。3家族ほどの参加でした。
最初に昆虫食倶楽部の代表をつとめる夏目恵介さんから、罠についての説明や佐鳴湖に入るにあたっての注意事項を伺います。
以前に浜松魚部の皆さんと川で遊んだ記事を書きましたが、今度は川ではなく湖。場所によっては泥が沈澱していて足がハマると抜け出るのが難しい場所もあります。転んでしまって胴長の中に水が入ると動けなくなり、最悪な場合死者が出る可能性もあるので、ここは真剣にお話を聞きましょう。(※事故を防ぐために、昆虫食倶楽部の皆さんや大人同士で注意をしています。)
事前に仕掛けた罠を回収しに行こう。気分はまるで探検隊。
それではさっそく湖に移動します。佐鳴湖の周りはランニングする方もいたり、野鳥を観察する方もいたり、地域の方々に愛される公園。他の方の邪魔にならないように気をつけて向かいます。
まず一つ目のポイントに到着。ちなみに佐鳴湖に入るっていっても、湖に入るための舗装された道はありません。
クサガメが一匹かかってました。
手の中に黒い亀がいるのわかりますか? これはクサガメ。名前の通り臭いです。クサガメは中国の方に住む亀で、いつからか人間が持ってきてしまったのが捨てられたか逃げ出したか、野生化して繁殖したそうです。
(※今回佐鳴湖に仕掛けられた罠は、静岡県に届けを出した上で許可を得て仕掛けてあります。)
次のポイントはさっきの沼地と違って湖の浅瀬。
罠に入ってくるのは亀だけではありません。網の中で何かがピチビチ跳ねてます。
ジャン♫ 大きなテナガエビでした〜。
テナガエビは在来種。食べると美味しいですが今回は亀の駆除が目的なのでリリース。佐鳴湖って浜名湖とも繋がっていて、独特で豊かな生態系があるんですって。
亀の罠は持ち帰ります。子ども達が自ら罠を持って運んでくれました。ただでさえ重いうえにこんな道なき道を歩くのでなかなかの重労働。大人顔負けですね。
捕獲した亀は種類や場所を記録します。地道な行為ですが、このデータによってどの場所にどういう種類の亀が住んでいて、数が増えたのか減ったのかがわかります。
外来種、在来種というと、どうしても動物に目が行きがちです。しかし植物にも外来種や在来種はあります。
休憩をとりながら、夏目さんが解説してくれました。
秋になると黄色い花を咲かせるセイタカアワダチソウ。背の高いトゲトゲしたような植物です。手入れされていない道端で大量に見かけますね。こちらは外来種です。
そして大きな葉っぱの植物は葛(クズ)。葛湯やお菓子でも使用する葛です。こちらは在来種ですが繁殖力が強く、海外で野生化し繁殖してしまうと辺り一面が葛だらけになってしまうため「グリーンモンスター」と呼ばれているそうです。
何となく、在来種は弱く外来種は強い…みたいなイメージを持ちがちですがそんな事もなく、人間の軽はずみな行動で種を移動することでとんでもない事になるのは国内・国外、どこでも抱える問題のようです。
まだまだ捕獲は続く。佐鳴湖に浮かぶサギ島にも行ってきます。
この活動。夕方4時からスタートしているのですが…。暑いんです。
今年の猛暑、ただでさえ異常なほど暑いのに、胴長を履いて薮の中を進み、泥水の中を歩いて…もう汗びっしょり。「暑い」」「疲れた」「喉渇いた」口からはこの3つの言葉しか出てきません。
さて、駆除活動もそろそろ終わりかな…と思ったら、次はサギ島という場所に行くんだとのこと。
サギ島? はてどこでしょう。佐鳴湖北岸には段子川(だんずがわ)にかかるふれあい橋という橋があるのですがそこからサギ島を見てみましょう。
完全に湖の中やないか〜い‼︎
この時はだいぶバテてたので、1秒程度気を失いましたね。
えぇ、もちろん行きますよ。舟なんてないですよ。歩いて渡ります。
ジャングルのような藪をかき分け湖に入り
大人も子どももサギ島まで歩いて渡ります。(何か日本とは思えないような写真ですね笑)
一応お断わりしておきますが、面白半分でサギ島まで渡るのはオススメしません。このルートは昆虫食倶楽部さんが長い活動の中で安全と判断したルート。少し外れた場所を歩こうとすると急に深みにハマる可能性があります。
ここで見つかった亀はクサガメでもなくイシガメでもなく、両方の特徴を持った亀。つまりクサガメとイシガメが交雑して出来た亀。こちらは後でも改めて触れますが、種の違う生物が交わることでオリジナルの種が途絶えたり、予想だにしない環境問題を引き起こす場合があります。こちらの亀は持ち帰って調査となりました。
外来種駆除活動は矛盾と葛藤の繰り返し。モヤモヤを抱えつつ、それでも自然を守り次の世代へつなぐ活動です。
サギ島から戻ったらひとまずは終了。捕獲した亀の測定をしたり、罠を洗って片付けます。
今回は、ミシシッピアカミミガメが3匹。クサガメが1匹。クサガメとイシガメの交配種が1匹の計5匹捕まえる事ができました。昆虫食倶楽部が最初に亀の駆除を始めた時は1箇所で20匹ほど獲れたという事で、その時に比べると外来種の亀もだいぶ少なくなった事がわかります。
これは環境が改善されつつあるという事ではありますが、とはいえ一度休んでしまうとすぐに爆発的に増えてしまうので、外来種駆除活動は常に続けなければならない活動なのだそうです。
テレビなどでもバラエティ番組などで外来種問題を扱うことがあり、「外来種は危険だ。」というイメージがついてきました。しかし、どの生物がどのように危険なのかを私たちはあまり知りません。
亀の場合、ミシシッピアカミミガメは在来種でもあるイシガメと生息環境が近いんだそうです。繁殖力が強く攻撃性の強いアカミミガメは、イシガメから生活する場所や餌を奪います。
クサガメはまた別な問題を持っています。それはイシガメと交雑してしまう事です。交雑についての問題は簡単ではないのでここでは説明を避けますが、それぞれの外来種によって起こる問題は一つではないのです。
「外来種駆除の活動にはずっと矛盾や葛藤が付きまとう」と、昆虫食倶楽部の夏目さんは言います。
メディア等ではさも外来種が悪者のような扱いにしがちですが、外来種は生きていく事に必死なだけで何も悪くありません。
人間が気まぐれて連れてきて、飼えなくなったら無責任に捨ててしまう。その繰り返しが生態系の破壊へと繋がり、罪のない生きているだけの亀は駆除されていくのです。
自然を壊すのは人間。人間が居なけえば環境は保たれて、無駄な殺生は必要なかったのに…。とは思いつつ、元々あった自然にできるだけ近く戻すことができるのも人間ではあるのです。
今の時代を生きている者の責任として、次の世代へ大事な自然を受け渡していくために、昆虫食倶楽部は外来種駆除活動を続けていますし、この活動を知ってもらうために広く参加者を募っています。
昆虫食倶楽部の活動については下記にリンクを貼っておきますが、割と近々にこのようなイベントがあります。
子ども向けの内容ではありませんが、今回の外来種駆除問題にも通じる話を聞くことができます。
絶賛予約受付中ですので、環境問題に興味のある方は参加をお勧めします。
この記事を読んでいただいた皆さん。
もちろん言われなくても分かっている事と思いますが、生き物の命を預かるという事は本当に大変な事です。ペットブームなどもありこの数年で新しくペットを飼い出した方もいらっしゃるかもしれません。
一度壊れた環境は元を戻すことは不可能に近いです。最後まで責任を持って飼っていただけるようよろしくお願いします。