日本の相対的貧困率は15.4% 注目される子ども食堂
2018年の厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」によると、日本の相対的貧困率は15.4%で6人に1人が貧困状態にあると発表しています。相対的貧困率はその国や地域の水準よりも貧しい状態にある人達を指し、世帯所得が水準所得の半分以下である状態をいいます。
浜松市では2020年「浜松市子どもの貧困に関する実態調査」にて困窮群8.6%予備軍13.8%と発表をし、11人に1人が困窮状態にあることがわかりました。
とりわけ、ひとり親世帯のみでみてみると、41.7%、3人に1人が困窮状態にあるとされています。
このような実態が社会的に知られるようになったことから、「子ども食堂」の存在が注目され年々増えてきています。
2018年は2286か所
2019年は3718か所
2020年は4960か所
2021年は6007か所
と毎年1000か所以上が増えており、コロナ渦でも衰えず、感染拡大前後では1.6倍増加しています。
2018年4月、「地域貢献団体はまはっぴー」(以後、はまはっぴー)も活動をはじめました。
大きな敷地のはまはっぴー 多くの子どもたちが気軽に遊びに来る
線引きはしない!誰でも参加OK
昔は色んな世代の家族と一緒に食卓を囲む風景がありましたが、核家族化した最近ではその機会も失われつつあります。
これにより孤食や他者とのコミュニケーション不足、ひきこもりなどが問題視されています。
はまはっぴーでは、地域の方々が寄り集まって、みんなでワイワイご飯を食べ、地域の中での安心できる居場所づくりをしています。
開設当初は子ども食堂として活動していましたが、地域の中で孤立しやすい人たちともつながりたい、地域のコミュニティを創成したい、という想いから、子どもに拘らず誰でも気軽に参加できるように「家族食堂」としての活動に移行しました。
これにより、地域のお年寄りや違う校区の家族、色んな世代の人たちの交流の場が出来上がりました。
はまはっぴーでは困窮状態にある、なしにおいても関係なく受け入れています。
困窮状態は常に可変的であるし、金銭的には問題なくても様々な理由から「助けてほしい」「苦しい」状態である人はいるからです。
線引きは行わず、誰でも気軽に安心して訪れることができるようにしているのです。
学校の宿題もはまはっぴーで!
「もったいない」を「ありがとう」へ
はまはっぴーには社会福祉協議会やNPO法人を通じて様々な企業から物資が届きます。
・消費期限が近づいた食品
・商品にはできないけれど食べられる食品
・お店を畳んだ時に出る商品
・絵本の寄贈
・お弁当容器
など、内容も様々です。
企業からだけでなく、ご近所の農家さんからお野菜をもらうこともあります。
米、軽食、日用品など様々な物資が全国各地から届く
こうした取り組みは企業側からすると多くのメリットがあります。
廃棄コストが削減でき、CO2の削減にも貢献できることや、社会的責任を果たすことに繋がるのです。
SDGsの観点からも
「1:貧困をなくそう」「2:飢餓をゼロに」「3:すべての人に健康と福祉を」「10:人や国の不平等をなくそう」「11:住み続けられるまちづくりを」「12:つくる責任 つかう責任」「17:パートナーシップで目標を達成しよう」
など多くの目標を達成することにも繋がります。
SDGsの広がりによって、はまはっぴーでも地元浜松の企業とのつながりや支援が増えました。
地域のピザ屋や鰻屋からの支援
「家族の”えん”をつなぐ」はまはっぴーの活動
■家族食堂
地域のボランティアさん、食材の提供、各団体からの寄付などに支えられて運営しています。
ボリューミーで栄養満点の温かい食事が並びます。
地域のおじいちゃん、おばあちゃん、子ども、親子、校区外からの参加も大歓迎!
色んな世代が集まって皆でワイワイと昭和の大家族のような団らんを楽しみます。
※現在はコロナで中止をしています。
■お弁当配布、販売
コロナ渦で家族食堂の代わりにお弁当を配布、販売しており、家族食堂同様どなたでも利用できます。
はまはっぴーでは金額は決めておらず、無料~数百円で利用でき、その時の利用者が無理のない金額を支払う形にしています。
余裕のある時は余裕のない人を支え、自分も支えてもらう時には支えてもらう方式です。
大好評の手作りお弁当 栄養満点でボリューミー
■コミュニティの場を提供
はまはっぴーには多世代の様々な人が出入りします。
子ども達にとっては遊び場、大人にとっては核家族・シングルマザー(ファザー)・子育て・共働き・孤立・障害など共通の悩みを抱える人との貴重なコミュニティの場にもなっています。
悩み、とまではいかなくてもちょっとした愚痴を気軽に吐き出せる、聞いてくれる人がいる、わかってくれる、というのは現代社会では貴重な場でしょう。
はまはっぴーは運営する平野代表の家族の住む家でもあるため、「いつでも誰か」がいる「心のよりどころ」の場所でもあります。
■各行政機関からの依頼を受けて支援活動
児童民生委員、児童相談所、スクールソーシャルワーカー、障害福祉施設など行政関係機関と連携しています。
要請により、生活保護など生活に困っている人にピンポイントでフードパントリーとして食料品や日用品をお渡ししています。
行政と対象者の間に、はまはっぴーのような中間支援団体が入ることで、困窮した人にスムーズに支援をすることができるのです。
■困った人のお手伝い
はまはっぴーでは公式LINEを活用し、困った人が気軽に連絡できる環境を整えています。
地域には一人暮らしのお年寄りや地元から浜松へ出てきて頼る人のいない子育て中のママ、妊婦さんなどがいます。
・買い物代行
・家具の修理や組み立て
・庭木の剪定や雑草取り
・電球交換
などの家事支援をし、困っていることをお手伝いしています。
コロナ渦で深刻化する孤立や孤独をはまはっぴーでは「家族のえん」で解消を目指します。
フードパントリーなどの活動日は公式LINEでお知らせ
「えん」が生み出す明日への活力
今後の目標をはまはっぴー代表平野さんに聞きました。
「はまはっぴーでは「えん」をコンセプトにして、「縁」や「円」など人とのつながりを大切にしています。
現代社会は様々な原因で親子や夫婦が離れ離れになったり地域も段々と疎遠になったりして「えん」が崩壊していますが、私たちは「えん」を再度繋いでいく活動をしています。
「えん」が切れないようにするのも大切ですが、切れても再度繋ぎなおしたり、絡まったり解れているのであればそこを修復する、そういった支援も大切だと思うのです。
困っている、いないに関わらず誰でも気軽に訪れることのできる場所を目指しています。
今日は夕飯をお休みしてお弁当を利用しよう、子どもを預けてリフレッシュしよう、そういったちょっとしたことでも利用してもらって、明日への活力にしてほしいです。
ひとりじゃない、つながっているんだと感じる場所は本当に少なく思います。
地域にとってなくてはならない場所、ここに来ればなんとかなる!という安心できる場所、色んな人が「えん」でつながることのできる場所を目指しています。」
子ども食堂の開設理想数は、全国の小学校区(約1万9500)に最低1つ子ども食堂がある状態だとされています。
子ども食堂は「子どもを救済する」場所だけにとどまらず、はまはっぴーのように地域住民が集う場所としても見直されています。
日本の貧困問題やSDGsに注目が集まる中、拡大が続く子ども食堂。
小学校区に1つの子ども食堂もそう遠い未来ではないかもしれません。
笑顔溢れるみんなの場所