仏教の教えを大切にする天林寺保育園
浜松市中区にある天林寺保育園は、真徳山「天林寺」の敷地内にあり、仏教の教えを大切にしている園です。
浜松市役所から飛竜街道を北に進むと、下池川の交差点近くに坂になった入口があります。そこを上ると駐車場が広がり、手前に保育園、奥に天林寺があります。
高台に位置するので浜松市街を見渡すことができ、とても気持ちのよい場所です。
そんな天林寺保育園にはいつも明るい光が差し込み、たくさんの緑や花に囲まれ、子ども達の笑い声が響きます。
明るい光が差し込む天林寺保育園
「感謝の気持ちを持てる子に」という想いは食育にも共通
先生達からだけでなく、母体である天林寺の住職である理事長先生からも、常に感謝の気持ちを学んでいる子ども達。それは食育にも繋がっています。
命を頂いている、そして自分達の生きる力に繋がっている、食べることで生きていくことができている、そんな風に、食事に対しても感謝の気持ちを持ってほしいという想いがあります。
実際に、年齢や季節、ねらいに応じて様々なクッキングを開催し、食育への取り組みをしています。
「本当に不思議なんですが、自分で育てたり作ったものは、苦手だった野菜も自分から食べたりと、自然に口に入っていくんですよ。」
と嬉しそうにお話してくれる園長先生。
「こんな味がするんだね、美味しいね。」
と、子ども達から野菜について話してくたり、
「保育園で作って〇〇食べたよ。とお話ししてくれました。」
「家でも野菜を食べました。」
こんな保護者からの声を聞くたびに、クッキングは好き嫌いを克服するきっかけにも繋がることを日々実感しているそうです。
農園の看板も、子ども達の手作り
年齢やねらいに応じた食育クッキング
クッキングとは、天林寺保育園で行う食育活動の総称です。
「げんキッズハウス」と呼ばれる木のぬくもり溢れるログハウスの中で開催され、大きく分けて以下のパターンがあります。
・食育クッキング
2~3カ月に1回のペースで、少人数制で調理実習を行います。
毎年テーマを決めたメニューを実践し、2021年は「小麦」。
これまでにも、クレープやピザなどを作りました。
・クラスクッキング(園全体)
季節に合わせて開催。自分達で育てた野菜を収穫し、調理します。
年長児は、月に1回、行事食のメニューも作ります。
梅干しや、切干大根も作ります。
・買い物クッキング(年中・年長)
メニューや買い出しリストを考えるところからスタート。
例えば、カレーを作る為にはどんな材料が必要か、子ども達で話し合い、実際に買い物に行き、調理、試食までをおこないます。
・縦割りクッキング
年少クラスが、次年度の食育クッキングに向けて、1月から少しずつ包丁を持ったりご飯を炊いたりと、調理に慣れる為の時間。4月からの食育クッキングデビューを楽しみにしています。
・その他、農園での菜園など
園内にある農園では、全ての学年がそれぞれの野菜を育てます。
まだ包丁を持てない年齢でも、調理に関わるだけでなく、野菜に水やりをしたりと、食べ物と関わることはたくさんあり、そんな経験をとても大切にしています。
「げんキッズハウス」から、いい香りが園内に広がります
「食育クッキング」は少人数で子どもの力を大切にする時間
毎週木曜日の午前中、4・5歳児の異年齢グループの子ども達が、調理を通して先生や友達と楽しく食について学びます。
一人一人との対話を大切にしたいという想いから、人数は5~6人の少人数制。
子ども達の素直な反応や声を聞き逃さないようにしています。
この日のメニューは「手打ちうどん」。
粉の状態から麺にして食べるまで、子ども達の手で一から作り上げます。
薄力粉、中力粉、強力粉を触ったり匂ったり、たくさんの粉の種類があることを学ぶところからスタート。
実際に、粉を袋に入れて水と一緒に混ぜていきます。最初はベトベトでも、揉んでいく度にどんどんまとまっていき、小麦粉の変化に好奇心がくすぐられます。
だんだんとひとまとまりになってきたら、さらに足で踏みます。
みんなで歌ったり、数を数えたりしながら楽しんで行います。
先生のお話に興味深々です
生地を冷蔵庫でねかしている間に、出汁の準備です。
透明なお鍋の中でかつお節が躍る様子はとても面白く、いい香りが部屋中に広がります。醤油やみりんも味見をしたりします。
「カツオだしのいい香り~!」
最後に、寝かせていた生地を薄く伸ばし、包丁を持って自分で切ります。茹でて、出汁をかけて完成です。
いただきますの挨拶をした後は、「美味しい!」「おかわり!」と、子ども達のお箸が止まりません、やはり、自分で作ったうどんは格別です。
そして、食器洗いや雑巾がけなど、最後の片付けまでがんばります。
「おいしい~!」
給食は自園調理。ランチョンマットや給食室にも工夫が
3歳から異年齢保育を行う園では、グループ(3〜5歳各1名ずつの3名で構成)で日々生活しており、給食はそのグループごとで食べます。
また、週2回実施している自由保育では、決められた時間帯の中で、自分の好きなときに給食を食べることができます。おなかがすいたと感じた子からランチルームに来ます。
子ども達がおいしく食事をいただく為に、のびのび体を動かして空腹感を持てるようにすることを大切にしています。
元気いっぱい体を動かした子ども達は、給食の時間になると、ランチルームに自分専用のランチョンマットを持って嬉しそうにやってきます。
入口のテーブルには一汁、二菜、果物が並び、子ども達が自分で配膳をします。
ランチョンマットは4つのグループに色分けされています。
子ども達は「黄(主食)」「白(汁物)」「赤(魚や肉が主役のおかず)」「緑(野菜が主役のおかず)」に色分けされたイラストを見て、できあがった料理がどこのグループに入るのか考えながら、お皿を並べます。
このように、日々の給食を通して、バランスのとれた食事について視覚から学びんでいます。
※アレルギーの為の除去食も用意があります(医師の指示書により、保護者と相談して決定します)
「おなかすいたー!」お昼になると嬉しそうにランチルーム集まってきます。奥に見えるのは給食室。
給食室をガラス張りにすることも、食育への大きな取り組みの一つです。
給食が作られる様子を自由に見られるようにすることで
「今日はどんなメニューかな」と食材に興味を持つことができます。
また、大きなお鍋を持って一生懸命作ってくれる人達の姿を見ることで、自然と感謝の気持ちに繋がっていきます。
園長先生をはじめ、先生もランチルームで子どもたちと一緒に給食の時間を過ごします。
食を通したコミュニケーションで、子ども達との距離もぐんと縮まります。
全職員で子どもを育てる、という園の想いはこのようなシーンからも伝わってきます。
「給食、とってもおいしいよ~!」
園から家庭へ伝えたい食育への想い
・食育冊子「おいしいね」の発行
年に1回、年度末に手作りの食育冊子「おいしいね」を保護者に向けて発行しています。1年間を通して子ども達がどんな風に食と関わってきたか、メニューやクッキングの内容など、食育活動の様子がとても細かくまとめられています。
家で再現できるように、実際に作ったレシピなども記載されており、子どもが経験したことを親子で振り返ることができる貴重な一冊です。
・給食で使用するかつお節が購入できる
保護者は給食で実際に使用しているかつお節を購入することもできます。
クッキングを通して出汁の旨味を経験した子ども達は、その味を家族と共有することで更においしいと感じることができ、豊かな味覚に繋がります。そんなきっかけの一つになってほしいという想いからの取り組みです。出汁の取り方を書いた紙も用意されています。
・子どもの楽しみ「お弁当の日」
今年から年に1回、「お弁当の日」を設けました。
「お弁当を、宝物のように子ども達が見せてくれるんです。お家の人が作ってくれた、ということがとても嬉しくて、本当に大切に食べています。
お弁当作りは大変だと思いますが、子どもの楽しい記憶に残ったり、親子の会話が広がったりと、とても大切な機会だと思うので、継続していきたい。」
そんな想いも、園長先生がお話してくれました。
冊子の内容も構成も、全て先生の手作り。
食育への想いを、冊子や行事などを通して保護者と共有していくことも大切な食育活動の一つ。食を通して子ども達の心身ともに豊かに育つことを、願う天林寺保育園。
そんな園内は今日も美味しい香りに包まれて、子ども達が楽しく生活を送っています。
【天林寺保育園】
430-0905
浜松市中区下池川町 27-1
Tel:053-473-7718
HP:https://tenriho.com/facilities
※2022年4月より『幼保連携型認定こども園 天林寺こども園』となります。
園内には、手作りの壁面制作物が多く、人の温かさを感じます