「子どもに怒りすぎて自己嫌悪になる」
「子どもは可愛いはずなのに、なんでこんなにイライラするんだろう」
子どもと一緒に過ごす時間が増えると、このように感じる日があるかもしれません。
精神科で働いていた私も子育ての中で行き詰まり、自分を責めてしまうことがありました。
そんなときに救われた考え方が「ポリヴェーガル理論」です。
名前だけ聞くと難しそうですが、考え方はとてもシンプル。
私自身もポリヴェーガル理論を知ってから、育児の負担感がとても軽減されました。
今回は、私にとっては欠かせない考え方である「ポリヴェーガル理論」についてお伝えます。
ポリヴェーガル理論とは
ポリヴェーガル理論を説明する前に、少しだけ自律神経のお話をします。
自律神経というと「交感神経(活動するときの神経)」と「副交感神経(リラックスするときの神経)」の2つを思い浮かべるかもしれません。
一方、ポリヴェーガル理論では、自律神経を3つの状態として捉えるのが特徴です。
「ポリヴェーガル理論がやさしくわかる本」の著者である吉里恒昭先生は、この3つの状態を「赤・緑・青」の3色で表現されています。
子育て中に「なんでこんなにイライラするんだろう」「何もしたくない…」と感じるときも、この3色を知っていると自分の状態を理解しやすくなりますよ。
それでは、それぞれの色を見ていきましょう。
大事なものを守ろうとする赤色

赤色(交感神経)は、身体を動かすときや、大事なものを守るために戦う(逃げる)ときをあらわす状態です。
身体には、次のような反応があらわれるでしょう。
- 肩や腕に力が入る
- 心臓がドキドキする
- 目つきが鋭くなる
こころの中では、怒りや焦り、不快感などを感じやすくなり、次のような考えが浮かぶかもしれません。
- 「~すべき」
- 「逃げたい」
- 「どうしてこうなるの」
たとえば、子どもが車道に飛び出しそうになったら、とっさに大きな声で止めますよね。
また、保育園に遅刻しそうなときも「急がなきゃ」と焦って、イライラするかもしれません。
このように赤色は、あなたにとって大切なものを守るために身体が働いているサインです。
自分を責めず「私は今、赤色なんだな」「私の赤色は今、何を守ろうとしているんだろう」と、こころや身体を観察してみてください。
「休んでね」のサインを出す青色

青色は、止まる・休むときをあらわす状態です。
強いストレスが続いたり「もうこれ以上は頑張れない」と感じたりすると、青色がこころと身体にブレーキをかけます。
すると、身体には次のような反応があらわれます。
- 疲れやすくなる
- 身体が重くだるく感じる
- 横になって休みたくなる
こころの中では、憂うつや悲しみ、無力感を感じやすくなり、次のような気持ちになるでしょう。
- 「もうムリだ」
- 「どうでもいい」
- 「誰にも会いたくない」
私は仕事や家事・育児がうまくいかなかったり、ホルモンバランスが崩れたりすると、何もする気が起きなくなることがあります。
そんなときは「あ、今は青色なんだな」と気づくようにしています。
身体が「ちょっと休んでね」「今日はムリをしなくていい日だよ」とサインを出していると捉え、思い切って休む時間を作ってみてください。
安心や安全を感じる緑色

緑色は、安心や安全を感じる刺激に出会った状態です。
身体には、次のような反応があらわれます。
- 顔の表情がやわらかくなる
- 呼吸が深くゆっくりになる
- 肩の力が抜けてリラックスする
こころの中では、安心や穏やかさ、感謝を感じやすくなり、次のような言葉が浮かぶかもしれません。
- 「いつもありがとう」
- 「居心地がいいな」
- 「うれしいな」
私は、家族でのんびり過ごしているときや温泉に入っているとき、祖母宅の猫と遊んでいるときに、「今は緑色だな」と感じます。
子育て中は忙しくて自分を後回しにしやすいからこそ、ほんの少しでも「心地いいな」と感じる時間を大切にしたいですね。
あなたは、どんなときに緑色の気持ちを感じますか?
赤色・青色が悪いわけではない
3色について知り「赤や青を減らして、頑張って緑を増やそう!」と思った方もいるかもしれません。
ただ「赤や青が悪くて、緑だけがよい」というわけではないのです。
また、頑張って赤と青を減らそうとすると、逆効果になることもあるため要注意。
たとえば、子どもにイライラしたときに「イライラしちゃダメだ」「優しくしなきゃ!」と頑張るほど、自己嫌悪になった経験はありませんか?
吉里先生は著書『ポリヴェーガル理論がやさしくわかる本』の中で「赤と青はそのままに、緑を活かした生活を」と繰り返し伝えています。
つまり「赤や青をなくそう」とするのではなく、緑色を感じる時間を増やしていくことが大切なのです。
例として、以下のような場面を想像してみてください。
「長靴をはいた猫を想像しないでください」と言われると、かえって長靴をはいた猫を思い浮かべてしまいますよね。
でも「サングラスをかけた犬を想像してください」と言われると、自然と意識は犬へ向かいます。
それと同じように、赤色や青色をなくそうとするのではなく、緑色を感じる時間を増やしていく。
そんな考え方が、ポリヴェーガル理論の魅力なのです。
私が作成している「緑色リスト」
私が「赤と青はそのままに、緑を活かした生活を」を実践するために続けていることが、ひとつあります。
それは、緑色になった出来事を手帳に書き留めておくこと。
たとえば、私にとっての緑色はこんな時間です。
- 動物園に行く
- 推しの動画を見る
- ひとりでスパに行く
- アロマの匂いを嗅ぐ
- 実家に帰って両親と話す
こうして書き出しておくと「今日は何かひとつ緑色になれることをしてみよう」と意識を向けやすくなります。
緑色になる方法は、人それぞれ。
ぜひ、あなただけの「緑色リスト」を作ってみてくださいね。
まとめ|赤も青も、そのままで大丈夫
子育てをしていると、イライラしたり、何もする気が起きなくなったりする日は誰にでもあります。
そんなとき「私は今、赤色なんだな」「今日は青色なんだな」と、自分の状態に気づくだけでも気持ちが楽になるかもしれません。
そして「赤や青をなくそう」と頑張るのではなく、ほっとできる緑色の時間を増やしていくこと。
私もこの考え方を知ってから、自分を責めることが減り、子育て中の気持ちと向き合いやすくなりました。
ぜひ、あなただけの「緑色リスト」を作って、毎日の暮らしの中で心地よい時間を見つけてみてくださいね。
参考図書
イライラ、不安、無気力、トラウマ……負の感情がラクになる 「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本
吉里 恒昭(著)/日本実業出版社
https://amzn.asia/d/00ZHcfOB

